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日大三をもっと知る

先輩こんにちは!

三井みつい 結里花ゆりかさん

2010年卒業

vol.12

ライフセービング日本代表
東京都出身

  • 2010年
    日本大学第三高等学校 卒業
  • 2010年
    日本大学文理学部体育学科 入学
  • 2016年
    ライフセービング世界選手権
    オーシャンウーマン5位入賞
  • 2023年
    ISA World SUP and Paddleboard Championship
    ディスタンスレース(プローンパドルボード)金メダル2連覇
  • 2024年
    全日本ライフセービング選手権大会
    オーシャンウーマン10勝達成

ライフセーバーとして活躍し、ライフセービング競技でも日本一・世界一に輝いている三井結里花さん。
成功の裏には、数々の失敗と挫折があったといいます。年頭講演会では、困難を乗り越え前進するためのヒントを語り、その言葉が在校生の背中を力強く押しました。


今日のおはなし

日大三高は、私にとってかけがえのない思い出が詰まった場所です。
今日は、ワクワクした気持ちでここに来ました。皆さんにお話ししたいのは、私がどのように学生生活を過ごしてきたかということと、ライフセービングについてです。
ライフセーバーは「溺れている人を助ける人」というのが一般的なイメージかもしれませんが、実際には事故を未然に防ぐことを一番大切にしています。

ライフセービングの世界

私はライフセービングスポーツにも取り組んでいます。今日はその一端を動画で紹介します。

(動画の要約)
全日本ライフセービング選手権は、ライフセーバーたちの競技大会。実際の救助活動を想定した競技種目を通じて、その技術や体力を競い合う。競技の目的は、命を守るための迅速かつ安全な行動を競うことにあり、一般のスポーツとは異なる特別な性格を持っている。
「オーシャンマン」「オーシャンウーマン」は、海の過酷な条件下でライフセーバーの力が試される究極の競技。第50回大会の注目選手は、ママさんライフセーバーの三井選手。波の状況を見極めながら、水泳、手漕ぎとオールのパドルボードで、砂浜から沖のブイを往復して順位を競った。三井選手はこの種目を連覇して、見事10回目の日本一に輝いた。

失敗が育てた私の強さ

皆さんがよく知っている「ビーチフラッグス」も、実はライフセービングスポーツの種目です。先ほどの動画で私は「オーシャンウーマン10回優勝」と紹介されましたが、「パドルボード」という種目では、2022年と2023年に世界チャンピオンとなりました。2024年はチーム種目でも世界一をいただくことができました。

そんな私でも、振り返るとその道は失敗だらけでした。でもその失敗は、本気になって全力で向き合ったからこそ出会えた失敗です。そして、その失敗を無駄にせず、次の挑戦につなげたことで、今の私があると思っています。

本番に弱い?

ここからは、私の学生生活を写真とともに紹介したいと思います。私が水泳を始めたのは5歳のときで、小学生から本格的に競泳を始めました。猛練習を重ねて全国ジュニアオリンピック大会に出場するまでになり、予選を2位通過したときは、コーチに「メダル取れるよ!」と言われました。でも決勝では一番悔しい4位という結果。「私、本番に弱いのかな」と思うようになりました。

中学では水泳に加え、学校行事にも力を入れていました。合唱コンクールでは、どうせやるなら優勝目指そうよ!とクラスをまとめて、2年連続で優勝を勝ち取りました。卒業アルバムには、私が立ち上がって喜んでいる写真が収められています。
体育祭ではムカデ競走の先頭を務めた際に、転倒して肩を脱臼するハプニングもありましたが、先導役として一生懸命チームを支えました。

高校受験では第一志望の高校が不合格で、「本番に弱い」という言葉が再び頭をよぎりました。日大三高の水泳部では、本当に大切な仲間ができました。そして高校2年生の夏。全国大会に出場するような実力を持っていた私が、なんとインターハイ予選で一周遅れになるという人生最大の挫折を味わいました。翌日落ち込みながら学校に行くと、先生は保健室で大泣きさせてくれて、友達は優しく声をかけてくれました。

みんなの支えで立ち直った私は、「お願いだから水泳やめて。もう苦しむ姿を見たくない」と懇願する母を説き伏せて、新しいスイミングクラブに移籍しました。でも全然結果が出なくて「やっぱり本番に弱い」と思い悩みました。そのときコーチがオリンピック代表の入江選手を例に「この人は自分なら絶対できると信じていたから世界新記録を出せたんだ」と話してくれました。
この言葉から私は学んだんです。失敗や挫折があっても、自分の可能性を信じて挑戦し続けることの大切さを。最後のインターハイは見事出場が決まり、学校に横断幕を出してもらったことが今でも記憶に残っています。

実際のメダルを持たせてもらいました!

命を守る使命

大学に入り、ライフセービングに出会いました。プールと違って、毎日条件が変わる海の世界に魅了されました。でもライフセーバーの資格を取って初めての監視活動中、救護した方が命を失いました。これをきっかけに、私は一人でも多くの命を救いたい、いや、命を失う人をゼロにしたいと思うようになりました。

それ以降、何事も全力で取り組むことを誓い、競技でも結果を残してきました。母親になっても競技を続ける決心をしました。産後の復帰は難しく、試行錯誤の日々でしたが、学生時代に学んだ「自分を信じる力」が私を支えました。今もその思いで、命を守る活動を続けています。

未来の自分に贈る経験

最後に皆さんにお伝えしたいことがあります。一つは、目の前のことに全力で取り組むこと。全力なら失敗も成功も自分の糧になります。
未来の自分に、今の経験をプレゼントしてほしいです。もう一つは、自分を一番信じてあげてほしいということ。心の底から自分を信じると、新しいアイデアが浮かんで、目標に向かって突き進む勇気が湧いてきます。

短い時間でしたが、私の話が少しでも皆さんのヒントになれば、これ以上嬉しいことはありません。ありがとうございました。

座談会

  • 聞き手
    校長 樋山 克也
  • 聞き手
    国語科教諭 坂田 泰郎
  • 司会
    広報部主任 福家 公次

講演会終了後には、樋山校⾧や在学時に授業を受け持っていた先生方との座談会が開かれ、講演の裏話や三井さんの学生時代のエピソードで話が盛り上がりました。

今日の話のテーマには、どんな思いを込めましたか?

三井
私が高校時代に職業講話で、現役の学校の先生が「今の子どもたちは夢や目標がない」と言っていたのが印象に残っていて。自分は夢や目標があったからこそ充実した生活を送ることができました。それで、今日の話のテーマにしました

教員を目指していたという話は、今日の講演ではなかったですね。

三井
そうですね。教員を目指して文理学部に進学して、教育実習は三高でさせてもらいました。卒業後は保健体育の教員として働いていましたが、妊娠出産で退職して。高校3年生に向けてそのような話もしたかったです。

先生方から見て、高校時代の三井さんの印象は?

坂田
今日の講演を聞いて、高校3年生にも聞かせたかったなと思いました。話に引き込む力が素晴らしかったです。私は三井さんに現代文を教えていましたが、本当に明るくて、リーダーシップも取れる生徒でした。三中生によくいるタイプだけど、中学は別だと知って驚きました。
福家
私も授業を担当していましたが、特に印象に残っているのは、インターハイ予選で敗れて落ち込んでいたときのことですね。普段なら授業に集中するようたしなめるところでしたが、そのときは話を聞きました。
三井
あのときは本当に救われました。励ましてくれた友人や、見守ってくれた先生方のおかげで、今の自分があります。講演ではうまく伝えられなかったかもしれませんが「三高に入学して良かった」と心から思っています。同行した夫も「三高って良い学校だね」と言っていて、誇らしい気持ちです。

大学では、水泳からライフセービングに転向したんですね。

三井
そうですね、水泳にまつわる他のこともやってみたらとコーチに勧められて、ライフセービングを始めました。夫も一緒に監視活動と競技をやっていて、命を守る仕事にとてもやりがいを感じています。

次の目標は?

三井
第二のオリンピックと呼ばれるワールドゲームズ(THE WORLD GAMES2025)や、日本人が挑戦したことがない海峡を渡るレースへの出場です。珍しいことをするとメディアに取り上げてもらえるので、多くの人にライフセービングを知ってもらって、自分の身を自分で守る術を身につけてもらいたいんです。そのことで、水難事故ゼロが実現できればと。

最後に何かメッセージがあればお願いします。

三井
全力で目の前のことに打ち込んで、全力で楽しんでほしいです。私も周囲に支えられてここまで来たので、みんなにも安心してチャレンジしてほしいです。
樋山
子どもたちが前向きになれる話をありがとうございました。三井さんが中高時代に本気で取り組んできた姿勢が、絶対に子どもたちに届いたと思います。話を聴いただけで終わらず、実践してくれることを期待しています。本当にありがとうございました。