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先輩こんにちは!

石田いしだ しほりさん

2008年卒業

vol.09

豊田通商株式会社
食料・生活産業本部 食料・生活産業企画部
事業開発・DXグループ 主任

  • 神奈川県秦野市出身
  • 2008年
    日本大学第三高等学校 卒業
  • 2009年
    東京大学理科II類 入学
  • 2013年
    東京大学農学部 卒業
  • 2013年
    豊田通商株式会社 入社
  • モスクワ大学ロシア語文化研究所 留学、
    株式会社ベジ・ドリーム栗原 取締役農場長を経て
  • 2020年
    豊田通商株式会社へ帰任 現在に至る

毎年恒例の年頭講演会。今回の講師は本校卒業後に東京大学理科Ⅱ類へ進学し、現在は豊田通商株式会社で活躍されている、石田しほりさんです。「東大生は宇宙人じゃない~自己肯定感が人生を創る」という興味深いテーマでお話いただきました。


自分に自信がない人は、東大を受験しよう

まずは皆さんに質問です。皆さんは自分に確固たる自信がありますか?
人生をかけてやり遂げたいことがあって、寝食を忘れて没頭したことがありますか?「ない」という方には、東大受験をお勧めします。何を言っているんだと思うかもしれませんが、今日の話を最後まで聞いていただければ、その理由が分かると思います。

東大生は宇宙人ばかりじゃない

講堂と各教室に分かれ、新型コロナウイルス対策を行いながら年頭演説会が行われました。

中高時代の私は明確な目標を特に持たず、勉強に遊びに習い事にとごく普通の学生生活を謳歌していました。転機となったのは、落ちこぼれの生徒が熱血教師と東大合格を目指すテレビドラマに感銘を受けて、駒場祭(東大の文化祭)に行った時のことです。キャンパスを見た瞬間、「自分にはここしかない!」と直感したんです。高校2年の秋のことでした。そこから猛勉強を始め、センター試験では9割得点するまで成績を伸ばすことができましたが、桜は咲きませんでした。一年の浪人を経て、掲示板に自分の受験番号を見つけた時の感覚は、今でも鮮明に覚えています。視界がまばゆく輝き、こんなにも綺麗な風景があるのかと思うほどでした。寝食忘れて没頭し、成功体験を得た一つ目のエピソードです。

東大には圧倒的な才能を持つ本物の天才がたくさんいましたが、私のように気合と根性で合格した人や地道に努力を積み重ねてきた人が大半を占めていたので、勉強すれば誰でも東大に行けると改めて実感しました。専門の研究にサークル活動に、充実した学生生活を送り、卒業まであと半年となった時に、何か最後のチャレンジをしたいと考えるようになりました。そこで始めたのがボクシングです。あえて苦手な運動に挑戦し、卒業直前の3月、プロボクサーとしてデビュー戦を果たすことができました。苦手な分野でも作戦立てて努力すれば、ある程度の結果は出すことができるのだと分かりました。

挑戦の繰り返しが、自己肯定感を高める

石田さんが携わった事業について

就職先の豊田通商は自動車、金属、化学品、食料など7 つの事業領域を持つ総合商社です。私は入社後9年間で3つの業務に携わりました。
最初に担当したのは、クルミのトレーディングです。世界的生産地のカリフォルニアからクルミを輸入して、国内の製パンメーカーなどへ販売する仕事です。現地でナッツ関連商品を調査して日本のお客様に提案したり、中国の加工工場新設にも関わりました。ちょうど日本でクルミの需要が一時的に高まったこともあり、多くのお客様とお取引をさせて頂くことができました。
入社4 年目は社内制度を利用して、モスクワ大学へ1 年間語学留学しました。滞在した地域は基本的な英語も通じず、ロシア語の知識ゼロだった私はスーパーでの買い物すら苦労しましたが、24時間言葉のシャワーを浴び続け、たくさんの人と交流することで、帰国時にはロシア語検定試験TPKИ第2レベル(ロシアの大学に入学できるレベル)を取得することができました。

パプリカ農場 & ロシアの街並み

帰国後の配属先は、関連子会社のパプリカ農場でした。農学部出身というバックグランドから選ばれ、出向したのですが、ここでの苦労話は1 時間あっても足りません(笑)。ただ、自然の厳しさの中で綺麗に育ったパプリカを見ると非常にやりがいを感じましたし、よい営業成績を残すことができたのは、大きな自信につながりました。
現在の仕事は、社会の困りごとを解決する新規事業のスタートアップです。豊田通商では「未来の子供たちへより良い地球環境を届ける」というミッションを掲げているので、新規事業もそれに則り、エコ農業の開発などに関わっています。働く女性に向けた新サービスも検討中で、あらゆる分野でチャレンジできる環境にワクワクしています。

楽しい毎日を掴み取るために

このように私は、挑戦と成功体験を繰り返し、そこから得た自己肯定感が次の挑戦を呼び寄せ、今につながっています。そんな日々を繰り返していると、毎日がとても楽しいです!冒頭で東大受験をお勧めすると言った理由は、刺激的で楽しい生活を送るために、まずは挑戦から始めましょうということをお伝えしたかったからです。これが今回、皆さんに一番伝えたかったメッセージです。
やることは、たった5つです。

  1. 何に挑戦するかを決める
  2. いつ達成するかを決める
  3. 信用できる周囲の大人に宣言する
  4. 達成までのスケジュールを立てる
  5. 黙々とタスクをこなしていく

後輩たちに熱く語りかけてくださいました

そして、大切なのは今日から動き出すことです。人は時間が経つと熱量が下がるものです。一人でも多くの皆さんが、今日から挑戦をスタートしていただけると嬉しいです。
私の体験は成功ばかりのように感じるかもしれませんが、その裏には実現できなかった夢や挫折が数多くありました。努力が報われない経験もたくさんしてきました。ただ、その時には次の新しい目標を設定すればいいんです。夢は叶うものではなく掴むものだと思って、無我夢中で取り組んでみてください。一度きりの人生、ワクワク楽しい毎日を、自分自身の手で掴み取りましょう!

座談会

  • 聞き手
    校長 新井 勇治
  • 聞き手
    教頭 樋山 克也
  • 司会
    広報部 副主任 古澤 麻亜理
  • 取材中のみマスクを外して、撮影しています。

講演会終了後には校長、教頭との座談会が開かれました。石田さんの中高時代のエピソードで、話に花が咲きました。

はじめに教頭先生から、今日の講演会の感想をお願いします。

樋山
生徒たちには、どんなことでもチャレンジする気持ちを持ってほしいと感じました。今、自分に自信を持っている人は少ないと思いますが、多くの挑戦の中に一つでも成功があれば、自信がついてきます。石田さんも様々なことに挑戦し、もちろん失敗もあったと思いますが、「気合と根性」で前進してきたと話されていました。本日の講演がいろいろなことに挑戦するきっかけになってくれたらと願っています。

先生方から見て、中高時代の石田さんはどんな生徒でしたか?

新井
周りに流されない、意志の強い生徒でした。信念を持って、諦めずに挑戦できる。その心の強さがキャリアの成功につながっているのではないかと思います。
石田
私だけでなく、意志の強い生徒が多い学年だったように思います。熱量があってやんちゃな雰囲気もありましたが、高校2 年から一気に勉強モードに切り替わりました。これは日大三中・三高全体に言えることですが、学生生活を楽しむ時と勉強と、メリハリがつけられる学校だと思います。
樋山
私が印象に残っているのは、石田さんが小学校6年生の時に、学校体験イベントで私の講座に参加してくれて、記念写真を絵葉書にして送ってくれたことです。あの時の生徒がこんなに立派になったと思うと、とても感慨深いです。

石田さんが講演の中でおっしゃっていた「信用できる周囲大人に宣言する」とは、富川先生のことだそうですね。

石田
富川先生には数学を教わっていましたが、ある日、私の理科の発表を見ていただく機会があって、その時に「あなたの発表に感動した」と褒められたんです。そこで自己肯定感が上がったことと、富川先生は応援してくれる先生というのが自分の中にインプットされて、以来、事あるごとに相談に乗っていただきました。

独自の勉強方法や、受験に対する心構えを教えてください。

石田
とにかく周囲に惑わされないことです。東大に限らずどこの大学も、基準点を越えれば合格できると考えて、その目標に向かって一途に挑み続ける。自分自身の戦いです。ただ、東大合格率の高い学校には、みんなでチャレンジする雰囲気があって、たった一人で戦う辛さが少ないように思います。だから日大三高も、東大受験者が増えるといいと思います。
新井
チャレンジ精神がなかったら、日大三高の未来はないと思います。校長として、夢や目標に向かって挑戦できる生徒を輩出していきたいと、強く思っています。チャレンジして、人生の納得感を得ることが、何より重要ですね。

今、目標にしていることを教えてください。

石田
これまで私が会社で経験してきたことは、全て先輩方が作り上げた事業でしたが、今は私が新しい事業をゼロから立ち上げようとしています。全てがうまくいくとは思いませんが、せめて一つくらいは軌道に乗せて、3 年後には大きな事業に成長させたいです。