日大三をもっと知る
先輩こんにちは!
岩田 将基さん
2008年卒業
防衛省 航空自衛隊
特別航空輸送隊 所属
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- 1989年
- 神奈川県横須賀市生まれ
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- 2005年
- 日本大学第三中学校 卒業
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- 2008年
- 日本大学第三高等学校 卒業
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- 2012年
- 防衛大学校 卒業
航空自衛隊 幹部候補生学校 入校
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- 2015年
- C-1中型輸送機 操縦士
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- 2019年
- B-777特別輸送機(政府専用機)操縦士
- 所属階級は取材当時のものです。
今年の年頭講演会には、航空自衛隊で特別輸送機(政府専用機 )の操縦士としてご活躍の、岩田将基さんが登壇しました。 講演テーマは「夢は叶えるもの~大空への誘い」。中学高校のさまざまな体験があったからこそ今の自分があると、生徒たちに語ってくれました。「先輩、こんにちは!」では、講演後に行われた櫻井理事長、松本副校長との座談会の様子をお伝えします。
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- 聞き手
- 理事長 櫻井 勇
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- 聞き手
- 副校長 松本 秀人
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- 司会
- 広報部 主任 佐々木 祐輔
失敗が育んだ絆
特別輸送機のパイロットになる、という夢を叶えた岩田さんですが、成功体験だけでなく、今日は学生時代の失敗談も話してくださいましたね。
- 岩田
- はい。パイロットの世界では訓練生時代から失敗を仲間と共有し、他人の失敗を自身の経験値として皆で能力を向上させるという気風があります。中学・高校時代に失敗をして勉強になることもありますが、生徒の皆さんが自分と同じ失敗をしないで欲しいと思いましたし、困難があっても努力すれば報われる、願いは通じる、ということを伝えたかったんです。
- 松本
- 私が印象に残ったのは、中学2年の校外学習(相模湖)で、グループ内でもめごとがあった話です。
- 岩田
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昼食後のオリエンテーリングの時間で、ボーイスカウト経験のある私はリーダーとしてグループをまとめようと張り切っていました。ところが、男女間の体力差やチーム内の競技に対する温度差を上手く気遣うことができず、班内の男女でケンカになってしまいました。そのことが原因で、集合時間には遅れ、先生には怒られ、後味の悪い思い出になりました。
学校に帰ると感想文を書くことになりましたが、私はあえてその部分には触れませんでした。ところが、対立した女子生徒のひとりは違いました。
「自分たちのことを棚に上げ、今まで岩田くんを責めたことを、恥ずかしく思いました。行事に大切なのは協力だということを思い出しました。」 と書いてくれたのです。自分は思いやりが大切だと心では分かっていたけれど、なんとなく気まずくて感想文に書けなかったことを後悔しました。そして、彼女の行動に対し、心の底から感動しました。
それからは、お互い協力しながら気持ちを分かち合うことができるようになりました。
その後、行事から15年以上が経ち、先日30歳の記念にと同窓会を開催した際に、彼女と再会することができました。この行事の経緯を話すと徐々に笑顔が見え、私たちはまるで当時に戻ったようでした。彼女は行事のことは全く覚えていないようでしたが、嬉しそうな表情を浮かべていました。
このような、大人になっても続く一生モノの絆は三中時代の行事あってこそだと確信しています。
学生時代を懐かしみながら
- 松本
- 学校行事を通じて友達の大切さを知った、ということですね。本校は行事が多く、そのひとつひとつを大事にしています。岩田さんの成長の糧になったなら、学校としても嬉しいことです。
- 岩田
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そうですね。行事をきっかけに、クラスの団結力が高まります。2月の合唱コンクールでは、クラス全員が心を一つに練習を重ねました。担任の加藤寛先生も早朝練習に付き合ってくださいました。その結果、3年生を抑えて全校2位という快挙を成し遂げました。
中学時代は2年生が一番楽しかった、振り返るとそう思います。
恩師の教えと、かけがえのない友人
講演の中で、英語科の佐々木恵子先生との交流の話が出ていましたが、高校時代に思い出に残る先生とのエピソードがあったら教えてください。
- 岩田
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高校2、3年生の時に物理を教わっていた赤羽先生が、私たち生徒の居残りに付き合ってくださったことですね。初めてのテストでひどい点数を取り、そんなに意地悪な問題が出たわけではありませんでしたが、自分が勉強した時間と結果が比例しないことが悔しくて、職員室の隣にある自習スペースに問題を広げ、先生に分からない問題を教わりに行きました。すると先生はまず、「君はどんなふうに考えて、どこまでたどり着いたの?」と尋ねました。答えを与えるのは簡単です。でも、まずは自分の力で考えて、少しでも前に進まないと、知識が自分のものになりません。先生はヒントだけを与えて、自身で探究する力を養ってくださいました。そういった教わり方をすると、家に帰って復習しても問題が解けるんです。
3年生になってから塾へは行かず、自習スペースで毎日毎日教わりました。赤羽先生の教え方には、芯があって愛情があります。私もこういう人になりたいと思う目標です。
当時、私の他にあと2人の同級生が自習スペースで共に学習をしていました。時に悩み、教え合い、互いの足りない部分を補うように勉強しました。切磋琢磨した仲間は、今でも何かあると助け合える、かけがえのない友人です。
分かりやすく講演する岩田さん
- 松本
- 岩田さんの話は、我々教員の話より生徒たちの心に響いている様子でした。
- 岩田
- 特に、私の失敗談から少しでも気付きを得てくれたら、と願いながら話をしていました。会場は静かでしたが、時折生徒と目が合ったり、前のめって聞いたりしている様子だったので、真剣に聞いてもらえているように感じました。
- 櫻井
- 岩田さんの話には、引き込まれるものがありますよ。卒業式での生徒会長としての答辞は素晴らしかった。今でも覚えています。確か同級生3人が防衛大学校に進学したんですよね?
将来の夢を見つけたきっかけ
真剣に聞く生徒
- 岩田
- はい。防衛大学校に進学した3人のうち、私を含め2名が航空自衛隊のパイロットになりました。陸海空どの自衛官を目指すのかは、入学後に決まります。同じ航空自衛隊の幹部職域でも、配属は航空管制、整備、気象、輸送など、約30もの分野に分かれます。同期が同じ道を辿っていることに、縁の深さを感じます。
どのようなことがきっかけで防衛大学校やパイロットを目指すようになったのでしょうか?
- 岩田
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中学3年生の頃、「将来は人の役に立つ仕事がしたい。」と漠然と思っていた時、たまたま見たテレビドラマで「パイロットってかっこいい!」と思いました。飛行機の運航にはパイロット、整備士、CAさんなど多くの人が関わることを知り、チームで何かを成し遂げることにワクワクしました。高校の体育祭や学園祭、生徒会活動でも、チームで作り上げることがとても楽しかったので、自分のやりたいことはこれだと思うようになりました。
さらに興味がわいて調べると、民間の航空会社だけでなく、自衛隊や警察、海上保安庁でもパイロットの仕事ができることを知りました。また、祖母が住んでいた家の近くに防衛大学校があり、幼少の頃からその制服姿に憧れを抱いていました。
小さな時の憧れと自身の興味がしっかりと噛み合うようになると、自然と防衛大学校を目指すようになりました。
特別航空輸送隊の存在を知ったのは、いつでしたか?
- 岩田
- ちょうど高校を卒業した直後です。小さな頃からやっていたボーイスカウトの活動が評価されて、皇太子殿下(現天皇陛下)のご接見を賜る機会に恵まれました。代表挨拶をさせて頂いた後のご歓談で殿下は、高校卒業後の進路を尋ねられました。「防衛大学校です。」と答えると、励ましのお言葉を頂戴し、そのご歓談の中で航空自衛隊の特別航空輸送隊が、皇室や内閣総理大臣など国賓等の輸送に従事していることを知りました。
念願の特別輸送機パイロットに
特別航空輸送隊の任務は、国賓等の輸送だけではないんですね。
- 岩田
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はい。政府専用機は、国賓等の輸送に供されるほか、必要に応じ、緊急時における在外邦人等の輸送、国際緊急援助活動や国際平和協力業務等実施のための輸送の用にも供されることとされており、日本の国際貢献の一翼を担う部隊です。
前任地での経験にはなりますが、平成28年熊本地震では、被災地へ支援物資を届けました。昼夜を問わないフライトでしたが、被災者の方々を助けることができるのは自分達しかいないのだという強い使命感を持って任務にあたりました。
パイロットになって良かったと思うことを教えてください。
政府専用機コックピットの様子(右側が岩田さん)
- 岩田
- 年々厳しさを増す日本外交の一端を国賓等の輸送という形で担い、「国賓等の目的地到着を1秒単位でコントロールする」という大きな緊張感を持って迎えた任務を、無事に終えることで得る仲間との一体感と達成感は、民間のパイロットではなかなか味わうことのできない醍醐味ではないかと感じています。中高6年間で培った、仲間との協力や自身で考える力が今の職業に大いに役立っています。また、運航の性質上、個人で行くことの難しい国でも渡航が可能であり、その土地の文化や食事など自身の五感で感じ見聞を広めることができる点は大変魅力的です。
- 松本
- 中学高校のさまざまな体験があったからこそ今の自分がある、というお話は、目標に向かって日々頑張っている生徒たちに、勇気を与えてくれました。我々教師にとっても、教え子が夢を叶えた話は一番嬉しいです。
平成31年4月 新政府専用機の運用開始
最後に、生徒たちにメッセージをお願いします。
- 岩田
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しっかり学んで、たくさん遊んで、自分が楽しいと感じること、興味のあることを見つけてください。大きな夢を追い続けるのは大変ですが、小さな目標をコツコツ達成することで、少しずつでも確実に夢に近づくことができます。不安もあると思いますが、目標達成に何が必要なのかを突き詰め、諦めずにまずは目の前のすべきことに臨んでみてください。
しかしながら、一人で取り組む必要は全くありません。つらい時や、くじけそうになった時、助けてくれるのは仲間です。この学校には、一生モノの絆を育む環境があります。是非そんな仲間と、有意義な学校生活を送ってください。
おそらく10年後、15年後には今よりも広大な世界が 皆さんの目の前に広がっていることでしょう。でも、案ずることはありません。信頼できる仲間との楽しい大人の世界が待っていることでしょう。そう考えてみると大人も楽しそうだなと思いませんか?
昨今の皆さんを取り巻く環境は、多種多様な情報が飛び交う難しい時代だと思いますが、「何が大切なのか?本質は何なのか?」ということを念頭に置いて、是非たくさんのことにチャレンジしてください。
皆さんの進学先、社会でのご活躍を世界の空より祈念しています。
- 櫻井
- この日大三中・三高で私たちが大事にしてきたことが、岩田さんの中に力強く息づいていることがわかって、大変嬉しく思いました。岩田さんの話を聞いて、生徒たちも意識が変わっていくと思います。今日はありがとうございました。
中型輸送機 C-1機種転換教育(右側が岩田さん)
中型輸送機 C-1の運航中 & 「夢は叶えるもの」 ~大空への誘い~
櫻井先生、岩田さん、松本先生