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高校トップページ > 先輩、こんにちは! > 〔第8回〕 滑川瑞穂さん

先輩、こんにちは!

プロフィール

年頭講演会では毎年、本校の卒業生を講師としてお招きしています。今回は明治学院大学で臨床心理学を教えながら、精神科のクリニックや心理相談室でカウンセリングをしている滑川 瑞穂さんに、「心を考える〜自分らしい人生を生きるために」をテーマにお話しいただきました。

心理学は「心の科学」

私は大学で心理学を学んだあと、大学院に進学しました。心理士になるための資格試験は、基本的に大学院を修了しないと受験できないからです。日本には臨床心理士という民間資格しかありませんでしたが、最近、公認心理師という国家資格ができたので、働きながら勉強して取得しました。心理士は病院で患者さんの治療に携わったり、学校のスクールカウンセラーや企業の心理カウンセラーと、いろいろなところで働くことができます。

日本大学第三高等学校・中学校

ところで、皆さんは心理学にどんなイメージを持っていますか?
心理学は、人の心の動きや、人や動物の行動を研究する学問です。心理学を学んだら、人の心を読めるようになるわけではありません。テレビで有名なメンタリストは、心理学を応用しているのかもしれません。

一口に心理学といっても、研究対象によってたくさんの種類に分けられます。
例えば生理心理学では、心と体の反応の関わりを研究します。ある心理状態の時は脳のどこが働いているのかといったことを、実験用のラットを使って調べたりします。
社会心理学は、日常生活の中で個人や集団がどのような行動をとり、そこにはどんな法則性があるのか、人の心と行動の仕組みについて研究します。
この他にも家族や夫婦について研究する家族心理学や、犯罪に関わる人の行動や心理を研究する犯罪心理学、実在しているものと見え方の違いを研究する知覚心理学など、様々な領域があります。


話を聴くことが癒しにつながる

皆さんに馴染みのある心理学は、カウンセリングや心理療法だと思いますが、それは心理学の中でも臨床心理学の領域になります。臨床は「床」に「臨む」と書きます。床は病床、臨むは向かい対すること、つまり病める人に寄り添うという意味です。
私はこの臨床心理学を専門として、大学で教えています。また、精神科のクリニックや心理相談室では、心の問題を抱える人に寄り添って解決に導くカウンセラーをしています。

では、カウンセラーはどうやって心の問題を解決すると思いますか?
すごいやり方がありそうですが、実はとても地道な方法です。それは、じっくり話を聴いて相手の心を理解する、それだけです。話している時の相手の様子を観察することも大事です。まくし立てるように話すのと、ゆっくり話すのとでは、心理状態が違います。さらに心理検査を行って、性格の傾向や思考の特徴を分析することもあります。
体の不調も問診、触診、検査を経て治療に入りますよね。それと同じで心の不調も、いろいろ話を聴いて相手の状態がわかった上で、どうしたら回復するのか考えて、カウンセリングをスタートします。

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心理学や医学では、話を聴くことを「傾聴」といいます。傾聴とは、話している人の体験があたかも自分のものであるかのように、身を入れて一生懸命聴くことです。専門家はこの聴き方を大切にしています。
傾聴は、聴いている人の基準で考えたり、自分の体験談を語ったり、話している人を否定したりしません。「話を聴く」ことだけに集中するのがコツなのですが、これが意外と難しい。大学で聴き方のテクニックを練習するほどです。

傾聴のテクニックには、「繰り返し」や「感情の反映」があります。
「繰り返し」は、相手の話の中から大切な言葉を、そのまま繰り返す技法です。例えば「今日部活に卒業生のA先輩が来てね」「A先輩が来ていたの?」というように、日常でも使われている方法です。
「感情の反映」は、相手の話から感情を汲みとって、言葉にして伝えてあげるやり方です。また、相手の心を想像することも大切です。「最近部活に行けていなくて」という場合、「行きたくても行けない」「ひとりぼっちで寂しい」など、様々な可能性があるので、決めつけずに接してみます。
皆さんが友達の話を聴く時の参考にしてみてください。


自分らしい人生を生きるために

ここまでは人の心を理解する話をしてきましたが、ここからは自分の心のお話をしたいと思います。
私は、自分らしい人生を送るためには、自分の心を理解することが大事だと思うんです。今、自分はどういう気持ちかな、体の状態はどんなかんじかな、というシンプルなことでいいので、日々自分を見つめる努力をしてください。そして、ストレスがあった時に、体にどんな反応が現れるか意識してみてください。そうすれば、自分を助けてあげる方法が見つかるはずです。

専門用語でコーピングといいますが、ストレスへの対処法を知っておくと、心の病にならないよう、上手にストレスと付き合うことができるようになります。紙に気持ちを書いてみるとか、音楽を聴いたり、好きなものを食べるとかでもいいんです。自分の心が楽になる方法を見つけてください。
ただし、ストレスをためないために好きなことだけしていればいいかというと、そうではないです。やりたくないことにもたくさん意味はあるので、一時の感情に流されず、何か意味があると思って取り組んでください。

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中高生はこれからの人生を自分らしく生きるために、いろんな力を身につけておく必要があります。思考力、言語表現力、体力、持続力、コミュニケーション力。第三中学・高校での体験は、そういう力をつける訓練や基礎になるものが多いです。当時はそんな風に思っていませんでしたが、大人になってそう思います。

どうか皆さん、たくさんの力をつけて、自分を大切にしながら周りも大切に、自分らしい人生を送ってください。


座談会

メンバー

講演会終了後の座談会では、講演の裏話や学生時代のエピソードをお聞きすることができました。

―― 滑川さんが今回のテーマに込めた思いをお聞かせいただけますか?

滑川: カウンセリングをしていると、人が生きていくのは本当に大変なことだと感じます。中高生が自分や周りの人の心を理解することで、どんな局面にも対処できるようになれば、との思いでお話しました。

松本: 心理という目に見えない事象を、具体例を用いながらわかりやすく解説してくださったので、とても興味深く、生徒の心に残るお話だったと思います。コロナ対策のため講堂で聴講できたのは1学年のみ、他は各クラスでの映像視聴でしたが、どの生徒も話に引きつけられ、非常に落ち着いた様子で聞いていたのが印象的でした。

―― 滑川さんの在学中のお話を聞かせてください。

滑川: 私は高校で写真部に所属していました。顧問の先生とは、今も年賀状のやり取りをしています。当時の思い出として浮かぶのは、先生方のキャラクターが濃かったことですね(笑)。友人は穏やかな子が多かったです。人の個性について考えるようになったのは、この頃です。

―― 新井校長は滑川さんの担任でしたね。どんな生徒でしたか?

新井: ご自分では秀でたものがない普通の生徒だったとおっしゃっていますが、クラスを牽引するリーダーシップを持っていたと私は思います。持ち前の能力を生かし、着々と実力をつけてきたことが、この世界でうまくいっている要因なのでしょうね。

―― 滑川さんが心理学を専攻しようと思ったきっかけは?

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滑川: 日大三高は良い先生と良い友達ばかりで、とても恵まれた環境でした。それぞれに個性があるから面白いのだと気付いたことが、心理学に興味を持ったきっかけです。そして日本大学には幅広い学部があるので、その中から自分がどれに向いているか考えやすかったです。


―― 現在の仕事のやりがいを教えてください。

滑川: 今は大学での仕事がメインで、心理学の講義をしたり、大学院生にカウンセリングの実践指導をしています。医療機関でクライアント(相談者)さんと会って、カウンセリングすることもあります。
やりがいは、クライアントさんの人生に関わって、その方が少しでも良くなるように考えることです。また、心理職を目指す学生を育てることにもやりがいを感じています。現場と教育、両方ですね。

―― 生徒にこれだけは伝えておきたいということがあればお願いします。

滑川: 講演中に「中高生にはいろんな力が必要」と話しましたが、全ての力を持ち合わせていなくても、特別優れた能力でなくても大丈夫です。いろんな力が合わさって「その人の力」になるからです。できないことも諦めず、楽しみながらトライすることが大切です。

―― 最後に松本副校長から今日の感想をお願いします。

松本: カウンセラーは相手に寄り添うために、偏見や独断を排除する訓練をしていると聞いて、我々教員も生徒指導の勉強になりました。生徒の心の支えになる話も多く、この上ない時間になったと思います。
教員にとって、年頭講演会で卒業生の活躍を知ることができるのは、何よりの喜びです。生徒にとっては、これからの自分の可能性を先輩から学べる良い機会です。滑川さんの活躍は本校にとって貴重な財産です。今日は本当にありがとうございました。

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