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高校トップページ > 先輩、こんにちは! > 〔第3回〕 鍋島千恵さん

先輩、こんにちは!

先輩、こんにちは! 【聞き手】理事長 櫻井 勇、【聞き手】校長 石島 広之
―― 本日は、年頭講演会で貴重なお話をありがとうございました。
         鍋島さんは、群馬県の上洲富岡駅の設計で、2014年度にグッドデザイン賞、
        2015年度には日本建築学会賞を受賞するなど、建築業界の第一線で活躍されています。
        本日のお話を聞いて、どの建築物においても、豊かな感受性から
        デザインが生まれていくという印象を受けました。理事長や校長はどのような感想を持ちましたか?
(司会:広報部主任 佐々木祐輔)

櫻井: 僕は建築というのは数値の世界だと思っておりました。鍋島さんが、「人の心の心地よさ」ということを考えて設計をされているということに本当に驚きましたね。理系の考え方だけでなく、文系的な発想も必要で、あらゆる幅広い観点が建築に生かされるものなのですね。

石島: 私も同じような感想を持ちました。私は昔の設計士は、線を引いて定規を動かして設計し、家を建てるというイメージしかなかったので、鍋島さんのお話で、これまでの建築家のイメージがガラリと変わりました。

鍋島: 建築の設計は、建物をつくることだけでも、空間をつくることだけでもありません。人の生活や活動を支える役目であったり様々な役割を担います。建築はただ空間をつくるだけではなく、多くの関係性を持たせてつくっていくものなんです。

考えることで見えてくる新しい視点

―― そのような考え方やものの感じ方、感受性というのはどのように育まれたのでしょうか?

日本大学第三高等学校・中学校

鍋島: 私は大学で建築を学び、建築を通して物の見方や捉え方など、『考える』きっかけを持つようになりました。建築の正解は一つではないので、だからこそ考えるんですね。今でも検索中です。いろいろな答えがあるからこそ、多様な場ができるんです。廊下が普通より広くなると人のたまり場になったり、遊び場になったり、待合せ場所になったり、人が移動するだけの廊下が様々な場所に変化する。少しだけ既成概念を変えてみると様々な考え方が生まれます。特に記憶に残っているのが、高校1年生の頃のことです。高校時代の私は引っ込み思案で、あまり前にでるようなタイプではなかったのですが、当時担任だった細谷先生が最初のHRのときに、「あなたは、人と話をするときによく目を見て話しています。あなたはクラスをまとめる力があるから、副級長になりなさい」と言われました。私は今まで、クラスをまとめるような性格ではなかったのですが、人と接するときに目を見て話を聞く、たったそれだけの行為でそういうふうに思ってくれる人もいるのだと知り、驚きました。自分が思っていた考え方を少しだけ変える事で、今までと違う見方ができると思うきっかけになりました。


―― 日大三高で想い出に残っている場所はありますか?

鍋島:  学校で過ごした日常の風景の記憶が残っています。教室にいくときに必ず外を通ったことや、10分間の休みにちょっと遊べる場所があったり、寄りかかれる腰高の壁や座る事の出来る窓台など、たくさんの居場所がこの学校にはありましたから、その何気ない日常の風景が想い出に残っています。階段や渡り廊下、中庭や屋上の風景など、この学校の空間形式を通して高校時代の記憶が甦るんですね。

櫻井:  僕も初めてここに来たとき、廊下は全部開放されていて雨も入ってきて、本当に開放的な学校だなと思いました。建築を通していろいろな日常の記憶が残っているというのは、とても面白いですね。

人との出会いが「今」をつくる

―― 日大三高を卒業後、日本大学の生産工学部建築工学科に進学されました。
        なぜ理工学部の建築学科ではなく生産工学部の建築工学科を選んだのでしょうか。

日本大学第三高等学校・中学校

鍋島:  私は高校時代から人が集まる街に興味を持ち、都市を学ぼうと建築学科を専攻しました。当然、理工学部の建築学科に行くのだろうと思っていたのですが、お恥ずかしい話、統一テストの結果が基準値を満たす事が出来ませんでした。結果、生産工学部の建築工学科に進学しました。生産工学部には居住空間デザインコースという特進コースがあります。『居住空間』コースでは『住まい』しか学ぶ事ができないと思ったので、都市を学ぼうと思っていた私は、居住空間コースに入るべきではないと考えていました。ところが、大学の教授から、「居住空間というのは、衣食住をする『住まい(居住空間)だけではなく、街の中の人が居る場所=居場所も住まい(居住空間)なのです』と教えて頂きました。街づくりも居住空間の一つなんだというこの言葉に刺激を受け、このコースに進みました。いざこのコースに入ってみると、実際に建築の仕事をしている先生方に教えていただくことができ、建築の考え方や建築の見方を教えていただきました。
 進路は、自分が思ってもみなかった方向に進んでいきましたが、もしこの進路でなかったら、建築をやり続けていなかったかもしれません。「選んだ道」や「進んだ道」が大事なのではなくて、実はその時々に出会った人や、その瞬間の出来事が、大切なのだと思うんですね。まさに一期一会だと思うのです。


石島:  鍋島さんは、最初から希望する進路に向かって進まれたと思っていましたが、実際は違ったんですね。すべての生徒が第一希望にいけるというわけではないので、今のお話は生徒に勇気を与えると思います。

―― 現在、仕事をされていて一期一会の大切さを感じることはありますか?

日本大学第三高等学校・中学校

鍋島:  仕事をしていていつも感じるのですが、たとえ小さな出来事でのお付き合いだったとしても、必ず次の仕事に結びつきます。そして、その出会いがまた別の出会いを生む。困った時は助けてくれたりします。ずっと未来に繋がっていくんです。仕事だけでなく、友人もそうですが、人との出会いは大事にしなければならないと常日頃、感じています。


優れた空間でかけがえのない体験を

―― 最後に、日大三中高の生徒に、メッセージをお願いします。

日本大学第三高等学校・中学校

鍋島:  私は、日大三にはこの学校ならではの空間、構成、景色があると思います。廊下から教室に入るまでの渡り廊下の庇が、上の階のテラスへの移動の場所になっていたり、1階の教室に入る入り口の廊下のひさしが2階の人にとっては渡り廊下になる。なんの変哲もない場所ですが、ほんのすこし考え方や捉え方を変えるだけで多様な場所にみえてくるのです。この学校は、素晴らしい建築のあり方だと思います。さらに面白いことに、学校建築の参考書には日大三の図面が載っています。ですから、大学で建築を学ぶと、建築学科の大学生は日大三の図面を見て勉強をするのです。それぐらいこの学校の建物は優れた考え方で設計された建物なんです。そんな事を少しだけ意識して、この空間で様々な体験をして多くの想い出を作ってもらえたらと思います。
 生徒の皆さんは、今後いろいろな人に出会っていくと思いますが、進路が出会わせてくれるのではなく、自分自身がたくさんの縁を引き寄せるものだと思います。そしてそれは、いろいろな可能性を秘めています。ですので、一つ一つの出会いを皆さんも大切にしていってください。


櫻井:  今日のお話は、生徒にとって建築というものを身近に感じられる大変良い機会となりました。

石島:  鍋島さんのお話の中で、出会いという言葉が一番多く、とても印象に残りました。貴重なお話をありがとうございました。

―― 本日は、お忙しい中どうもありがとうございました。今後のさらなるご活躍を願っています。

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