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中学トップページ > 先輩、こんにちは! > 〔第1回〕 市原英樹さん

先輩、こんにちは!

先輩、こんにちは!

記念すべき第一回は、大成建設の市原英樹さんです。市原さんは、年頭講演会でもお話を頂戴したように、画期的な工法「テコレップシステム」を開発し、昨年の「第十四回国土技術開発賞」の最優秀賞を受賞しました。

「テコレップ」とは、「大成 エコロジカル リプロダクション Taisei ECOrogical REProduction」から造られた名称で、環境にやさしい超高層ビル解体法としてNHKのニュースでも紹介されるなど、大変注目を集めました。「グランドプリンスホテル赤坂」の解体に用いられた工法だといえば、思い当たる人も多いかもしれません。

「人に歴史あり」という言葉もありますが、年頭講演会の後のインタヴューでは、講演では語られなかった驚きのエピソードも聞くことができました。

建築の世界で輝く先輩の話を、みなさんも是非読んでください!


日本大学第三高等学校・中学校
―― 『在校生に夢や勇気を与えたい』という趣旨で始まったこの企画ですが、第一回は市原さんになりました。
(司会:広報部主任 佐々木祐輔)
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櫻井: 市原さんにお願いしたきっかけは、大成建設株式会社の会社創設140周年記念式典にお招きいただいたところから始まります。基調講演で「トルコ・ボスポラス海峡の海底トンネル建設工事」の話を聞いて衝撃に近い感銘を受け ました。ゼネコンのイメージは完全に払拭されました。その後、縁あって同社の「グランドプリンスホテル赤坂の解体工事」の話を聞ける機会に接し、さらに、その講演で説明をされているのが本校の卒業生であることを知りました。広大無辺なこの社会の中で、情熱をもって仕事をする卒業生に会えて正直嬉しかったですね。市原さんのご活躍は、無限のポテンシャリティを秘める中高生に対し、大変な刺激になると思いました。


目的を達成するための手段を考えることは、勉強以外の学生生活の中で養うもの。

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市原: 「ゼネコンのイメージ」と先生は仰いましたが、生徒達には建築やゼネコンのイメージがそもそも無いかもしれない。ですので、いい大人が一生懸命ものごとに取り組んで、必死に喘いでいるところが伝わればいいかなと思いました。今回のプロジェクトで痛感したのは、限界やボーダーラインを自分で決めてしまったら、そこまでの人間にしかなれないということです。みなさんには学業を頑張ってほしいと思いますが、私自身は高校時代あまり真剣に勉強をしませんでした。しかし、思考することや、目的を達成するための手段を考えることは、勉強以外の学生生活の中で養うものだと思います。みなさんこれから大学に進学されると思いますが、学生時代にいかに多くの経験をしたかが、結果的に社会人になって生きてくる。


堀内:  生徒の引き出しを増やすきっかけになれば、ということですね。グランドプリンスホテル赤坂の解体工事は既成概念を覆すスマートな工事だったと思います。生徒にはインパクトを与えられたと思います。

―― 次に、仕事や生き方について市原さんの考え方を教えてください。

自分の生き方を評価するのは自分であってほしい。

市原:  興味があるものは、徹底的にこだわってやったほうがいい。こだわりがあることはひとつでなくてもいい。こだわる気持ちを持っていないと、人が言ったことに容易に流されてしまう。時には、自分を主張することで、他人とぶつかることもあります。社会にでるとそれで痛い目に遭うこともたくさんあると思いますが(笑)。最終的に自分の生き方を評価するのは自分であってほしい。人の評価も大切ですが、自分の人生に良い悪いを言われる前に、自分自身の生き方を評価する能力を持っていないと、人生もったいないなと思います。私はそういうつもりで生きているし、仕事をしています。

―― 市原さんの高校時代はどうでしたか?

市原:  私は公立中学から三高に入り、部活は卓球部でした。高校入学後、勉強以外に「何かをしたい」という衝動が非常に強かったので、部活動の選択に真剣に悩みました。部活動の良いところは、集団で、ある目的に向かってベクトルを合わせて活動することによって、仲間と共感・共鳴できるところです。そこで築いた人間関係は年とともに強固なものになっていきます。それは得がたい貴重なものと言えます。

堀内:  当時は男子校でしたよね。

市原:  そうですね。非常に規律が厳しかったです。登校時など正門に渡辺先生や本多先生など怖い先生方がズラリと並んでいました(笑)。今もそうだと思いますが服装や身だしなみは厳しくチェックされました。

堀内:  その厳しさが今に生きていることはありますか?

市原:  若さとは流行に流されたり、許容範囲を超えたりしがちですが、それではいけないという自制心が身につきました。また、大学ではヨット部に入部したのですが、ヨットは海のスポーツなので、発想はまさに海軍なんですね。非常に上下関係や規律が厳しかった。私は高校時代に免疫ができていたので、硬派な気風に抵抗なくスッと入っていけた。そうでなければ相当面食らったと思います。

―― ヨット部ですか。カッコいいですね。しかし、なぜヨットだったのですか?

市原:  ヨットは父の影響で始めました。例えば、太平洋を三浦半島から遠州灘、紀伊半島沖を航海する。ある意味それ自体が冒険で、ロマンティシズムやアドベンチャースピリッツを感じさせてくれるところに惹かれました。冒険心がなければ創造的な仕事はできませんし、ヨットは生涯続けたいと思っています。サラリーマンは会社や社会で人間関係の微妙なところを生きていかなければならないですよね。熾烈なパワーバランスの中で生き抜いていかないといけない。協調しすぎると自己が無くなり、協調しないと弾き飛ばされてしまう。社会を生きるバランス感覚は、案外遊びの世界で学んだことが生かされている気がします。

語学を修得するうえで最も重要なのは、相手に伝えたい思いがあるか、
思いを伝えたい相手がいるか。

堀内:  世界を相手に仕事をしている市原さん。やはり英語は必須ですか?

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市原:  あったほうがいいですね。語学は自分の思いを相手に伝える手段です。相手がきちんと理解できる言語で説明することはコミュニケーションを円滑にするために重要です。ただし語学を修得するうえで最も重要なのは、相手に伝えたい思いがあるか、思いを伝えたい相手がいるか、だと思います。目的が無いままにただ勉強しても意味がありません。海外の友達をつくりたいとか、洋画を吹き替えなしで観たいとか、洋楽の詩をわかりたいとか。単に英語の勉強をするということではなく、英語を使うことが目的になればいいなと思います。これは、日本がグローバリズムの中で生きていくために非常に重要なことだと思います。


櫻井:  なるほど。個人的には日本語は豊かな情感を伝える方向に発達した言語だと思います。本校の生徒にはそうした感性も身にまとってほしいですね。

自分を差別化し、自己実現ができる場所はどこか、
自分が学んだことや知識が最高に生きる舞台はどこなのか。

―― 市原さんが就職した1980年代はどのような時代でしたか。なぜ大成建設を選んだのですか?

市原:  入社が1986年、昭和61年です。バブル景気突入の前くらいですね。その後、多くの企業が設備投資を旺盛に進め、建設業は、その恩恵を受けることになります。ただ、当時の建設業は「きつい」「汚い」「危険」の3K業種と目され、今ほどの人気はありませんでした。大学は理工学部工業化学科卒なので、普通であれば化学会社や製薬会社、プラント会社に行くのがセオリーでした。しかし、並み居る有名大学の化学系の学生のなかで、自分というものが埋没する気がした。自分を差別化し、自己実現ができる場所はどこか、自分が学んだことや知識が最高に生きる舞台はどこなのか。それを探した結果、建設業であり大成建設でした。

―― 入社後、どのようにして超高層ビルの解体工事に繋がっていくのですか?

市原:  様々なテーマの研究や開発に携わりましたが、ビルの外壁の継ぎ目を埋めるシーリング材の研究をしている時、転機がおとずれました。超高層ビルでのサンプリング経験があるというだけで、高層ビルの解体工事の研究をしてみないかと上司から持ちかけられたのです。それは自分の分野外だったにも関わらず、「できません」とは言いませんでした。当時、社内には超高層ビルの解体技術専門の研究者はおらず、自分が第一人者になればよいと、未知の領域で二、三年の間コツコツ研究を重ねました。勉強したことがそのまま社会で生かされなくても、自己表現できる場は社会にはいっぱいあるということです。

―― 最後に在校生へメッセージをお願いします。

日本大学第三高等学校・中学校

市原:  生徒のみなさん一人ひとりに明るい未来があると思う。どういうところで活躍できるかは先の楽しみにして、今は何をやるにも一生懸命やってほしい。言葉を変えると、コツコツとか、こだわりをもってということになる。自分で決めたことを一生懸命やる心、習慣をもって学生生活を過ごしてほしい。生徒のみなさんが今やっていることは何も無駄にならない。全てが生かされる。ただし、直接的に生かされるかどうかは、自分次第です。


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